「親から土地を相続したので、売って現金化したい」

相続のご相談では、このようなお話をよく伺います。

ところが、土地を相続したからといって、すぐに自由に売却できるとは限りません。

相続した後になって、

  • 相続人が多く、話がまとまらない
  • 土地が共有名義になっている
  • 相続登記が済んでいない
  • 境界がはっきりしない
  • 私道の権利関係が複雑
  • 農地なので自由に売れない
  • 建物が古く、解体費用が高額

などの問題が判明することがあります。

今回は、「相続した土地を売ろうとしたら困った」というケースから、相続後の不動産で注意したいポイントを分かりやすく解説します。

🟦 1.相続した土地は、すぐに売れるとは限らない

相続によって土地を取得すると、「自分の土地になったのだから、いつでも売れる」と考えがちです。

しかし、実際には売却までにいくつもの確認が必要です。

相続後に確認したい主なポイント

確認事項問題があるとどうなる?
相続登記売却手続きが進めにくくなる
相続人全員の関与が必要になる場合がある
共有状態原則として共有者の協力が必要
境界売却時に測量・境界確認が必要になることがある
私道通行・掘削などの権利関係を確認する必要がある
農地農地法による規制を受ける場合がある
古い建物解体費用などが問題になることがある
抵当権等登記上の権利関係を確認する必要がある

つまり、「相続したこと」と「問題なく売却できること」は別の問題なのです。

🟨 2.相続人が多いと、土地の売却が難しくなる

特に注意したいのが、相続人が多数いるケースです。

例えば、父親が亡くなり、子ども3人が土地を相続したとします。

遺産分割をせずにそのままにしていると、土地が共有状態になることがあります。

その後、子どものうち1人が、

「この土地を売ってしまいたい」

と思っても、自分一人の判断だけで土地全体を売却することはできません。

さらに、その共有者の一人が亡くなると、その持分がさらに相続されます。

すると、

3人 → 5人 → 8人……

というように、共有者が増えてしまうことがあります。

これがいわゆる「共有の連鎖」です。

🟥 3.「土地はあるのに売れない」という状態になることも

相続不動産で特に厄介なのが、

土地そのものには価値があるのに、権利関係が複雑で売却が進まない

というケースです。

例えば、

「亡くなった祖父名義のままになっている」

「相続人の一人と連絡が取れない」

「相続人が遠方に住んでいる」

「昔の相続登記がされていない」

といった事情があると、売却の前段階で相続関係を整理する必要があります。

不動産会社に売却を相談したところ、

「まず相続登記をしてください」

と言われて、初めて問題に気づくケースもあります。

🟩 4.「境界が分からない土地」も要注意

相続した土地について、

「この辺までが自分の土地だと思っていた」

という認識だけでは、売却できないことがあります。

特に古い土地では、

  • 境界標が見当たらない
  • 隣地との境界が不明確
  • 古い測量図しかない
  • 隣地所有者が変わっている

といったことがあります。

土地を売却する際には、買主側から境界の確認を求められることもあります。

そのため、相続した時点で、

「登記上の面積だけでなく、実際の土地の状態も確認しておく」

ことが重要です。

🟪 5.「私道」が関係すると、さらに複雑になる

相続不動産では、土地そのものだけを確認していてはいけない場合があります。

例えば、

自宅へ入るための道路が私道だった

というケースです。

その私道について、

  • 誰が所有しているのか
  • 共有持分があるのか
  • 通行する権利があるのか
  • 水道・ガス工事のための掘削が可能なのか

などを確認する必要があります。

土地を相続した後に売却を考えたところ、実は接道や私道の権利関係に問題があった、ということもあります。

🟧 6.農地は「売りたい」だけでは売れない

相続した土地が農地の場合は、さらに注意が必要です。

農地については、一般の宅地とは異なり、農地法による規制があります。

そのため、

「相続したから、普通の土地と同じように売ろう」

とはいきません。

農地を売却したり、農地以外の用途に変更したりする場合には、農地法上の手続きが必要になることがあります。

したがって、相続した土地が、

「宅地なのか、農地なのか」

を確認することも重要です。

🟦 7.土地より「古い家」のほうが問題になることも

相続したのが土地だけではなく、古い建物付きの土地の場合も注意が必要です。

例えば、

土地を売りたい
↓
しかし古い家が建っている
↓
買主から解体を求められる
↓
解体費用が大きな負担になる

ということがあります。

特に長期間使用していなかった空き家の場合、

  • 建物の老朽化
  • 残置物
  • 庭木
  • 雑草
  • 境界
  • 害虫・害獣
  • 解体費用

など、土地以外の問題も出てきます。

そのため、相続では「土地の価格」だけを見るのではなく、売却するまでに必要となる費用や手間も考える必要があります。

🟨 8.「相続した土地をどうするか」は、早めに考える

相続した土地をすぐに売却する予定がなくても、放置することはおすすめできません。

時間が経つと、

相続人がさらに亡くなる
↓
次の相続が発生する
↓
共有者が増える
↓
権利関係がさらに複雑になる

ということがあります。

「いつか売ればいい」

と思っているうちに、手続きが大変になってしまうことがあります。

🟥 9.相続した土地は「売れるか」だけでなく「誰が売るか」も重要

相続不動産を売却するときには、

誰が所有者なのか

を明確にすることが重要です。

遺産分割協議をして特定の相続人が取得するのか、相続人全員の共有にするのかによって、その後の手続きも変わってきます。

例えば、

パターン① 長男が土地を取得

相続人全員で遺産分割協議
↓
長男が土地を取得
↓
相続登記
↓
長男が売却

という流れが考えられます。

パターン② 相続人全員で共有

相続人全員が持分を取得
↓
相続登記
↓
売却時には共有者全員の協力が必要

という形になります。

もちろん、具体的な事情によって適切な方法は異なります。

🟩 10.相続した土地は「相続手続き」と「売却」を別々に考えない

相続した不動産については、

① 相続人を確定する

↓

② 遺産分割をどうするか決める

↓

③ 不動産の権利関係を確認する(下記⑤も同時進行で行う方が良いです。)

↓

④ 相続登記をする

↓

⑤ 境界・私道・農地などの問題を確認する(上記③と同時進行が望ましいです。)

↓

⑥ 売却を検討する

というように、全体を見ながら進めることが大切です。

相続手続きだけを終わらせてから、

「さて、この土地を売ろう」

と考えたところ、思わぬ問題が見つかることもあります。

💡 まとめ

相続した土地は、単純に「財産をもらった」というだけではありません。

その土地には、

相続人・共有関係・登記・境界・私道・農地・建物など、さまざまな問題が隠れていることがあります。

特に、

「売れば現金になるから、とりあえず相続しておこう」

と考える前に、その土地が本当に問題なく売却できる状態なのかを確認することが重要です。

相続した土地について「売りたいけれど、何から確認すればいいのか分からない」という場合には、まず登記簿や固定資産税関係の資料などを確認し、現在の権利関係を整理するところから始めましょう。

相続は、「誰が財産を相続するか」だけでなく、「相続した財産をその後どうするのか」まで考えることが大切です。

参考:法務省「相続登記の申請義務化について」
   千葉地方法務局「長期相続登記等未了土地解消作業」

リンク先:相続手続きは“亡くなった後”ではなく“その前”から始まっています

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この記事を書いた人

立神 彰吾

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(特定行政書士・申請取次行政書士)
宅地建物取引士資格(未登録)
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