iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金の準備に活用される人気の制度です。税制優遇があるため多くの方が加入していますが、もし加入者が亡くなった場合、相続人がどのように手続きを進め、税務上どのような影響があるかを知っている方は少ないかもしれません。本記事では、iDeCoの相続手続きや、相続税・所得税の扱いについて、具体例を交えて分かりやすく解説します。

1. iDeCo相続の基本手続き

通常、iDeCoは60歳以降に引き出されることが想定されていますが、加入者が亡くなった場合には相続人が受け取ることができます。ここでは、主な手続きを説明します。

加入者の死亡通知

まず、加入者が亡くなった際、相続人は速やかに年金管理機関(銀行や証券会社など)に通知を行います。この通知後、金融機関から相続手続きに必要な書類が送られてくるため、そこから手続きが始まります。

必要書類の提出

相続手続きには、死亡診断書、戸籍謄本、相続関係説明図、iDeCoの残高証明書などの書類が必要です。これらを金融機関に提出することで手続きが進行します。

受取方法の選択

iDeCoの相続では、相続人が資産を現金で受け取るか、運用商品のまま受け取るかを選べます。選択により税負担が異なるため、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

2. iDeCo相続の税務上の扱い

iDeCoの相続には、相続税と所得税の二種類の税金がかかわってきます。相続人がどのように受け取るかによって、税負担が変わるため、理解しておくことが重要です。

相続税

加入者が亡くなった時点でのiDeCo評価額は相続財産とみなされ、相続税の対象になります。他の財産(不動産や預金)と同様に、相続税の計算に含まれます。

所得税

iDeCoの資産を現金で受け取る場合、その金額は「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されるため所得税の負担が軽減される場合が多いです。しかし、一時金として受け取る場合は所得税の負担が増える可能性もあります。高額なiDeCo資産を一時金で受け取ると、所得税負担が高くなる点に注意が必要です。

年金形式での受取

iDeCoを年金として受け取ると「公的年金等控除」が適用されますが、受給額によっては所得税が課される場合もあります。控除の範囲を超える分に対しては、通常の所得税がかかります。

3. 受取方法と税負担の比較

相続人が最適な受取方法を選ぶためには、税負担の違いを理解することが大切です。以下に主な受取方法ごとの税負担の違いをまとめました。

受取方法税の種類税負担の概要
現金一括受取相続税・所得税退職所得控除が適用され、所得税負担が軽減される場合が多い
年金形式で受取所得税(雑所得)公的年金等控除が適用されるが、超過分には所得税がかかる
一時金で受取所得税(退職所得)高額の場合は所得税の負担が増大する可能性がある

4. 事例:母親のiDeCoを相続したBさんのケース

実際のケースを紹介します。Bさんは母親のiDeCo残高1,200万円を相続しました。税理士に相談した結果、一括で受け取ると退職所得控除が適用される一方、全額を一時に受け取ることで所得税負担が増加することがわかりました。そのため、Bさんは年金形式で少しずつ受け取る方法を選び、公的年金等控除の範囲内での受け取りにしました。これにより所得税負担を最小限に抑えることができました。

学び:専門家のアドバイスがカギ

iDeCoの相続では、税負担が受取方法によって異なるため、税理士など専門家に相談することで最適な選択がしやすくなります。相続人にとってより有利な方法を見つけるために、プロのアドバイスを活用しましょう。

iDeCoの相続について正しい知識を身につけ、最適な受け取り方を選ぶことで、税負担を軽減しながら老後の資産を確保することが可能です。

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この記事を書いた人

立神 彰吾

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(特定行政書士・申請取次行政書士)
宅地建物取引士資格(未登録)
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「最強の一問一答 
行政手続法・行政不服審査法編」
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(行政書士法・戸籍法・住民基本台帳法)」