遺言書を作成する際に、現金や不動産に加えて「証券」を含めるケースが増えてきています。しかし、証券の取り扱いは複雑であり、書き方次第では法的な効力が弱まったり、相続人間でトラブルが生じたりする可能性があります。そこでこの記事では、証券を遺言に含める際の具体的な書き方や、行政書士がサポートできるポイントを詳しく解説し、トラブルを回避するための注意点を紹介します。
1. 証券を遺言に含める際の基本的な注意点
証券を遺言に含める際には、次のような基本的な注意点があります。
- 銘柄や数量を具体的に明記する
証券は種類や銘柄、保有数によって価値が異なります。そのため、遺言書には具体的な銘柄名、保有している数量、証券の保管場所などを正確に記載することが重要です。曖昧な記載や不完全な情報では、遺言の法的効力が不十分となり、相続人同士で争いが生じる可能性があります。 - 証券会社の情報を明記する
証券口座がどの証券会社にあるかを明示することで、相続人が口座の存在や証券の管理を把握しやすくなります。これにより、証券の相続手続きをスムーズに進めることができます。 - 遺留分に配慮する
日本の相続法では、一定の相続人には遺留分が認められています。証券を特定の相続人に遺贈する場合でも、他の相続人の遺留分に配慮しないとトラブルの原因となります。遺留分を侵害しないよう、証券の遺贈の範囲を適切に調整する必要があります。
2. 書き方で法的効力が変わる – 正確な遺言書作成のためのポイント
証券を遺言に含める場合、書き方の細部が法的効力に大きな影響を与えます。以下のような書き方のポイントを押さえておくことが大切です。
- 具体的な遺贈方法を明記する
例えば、「◯◯証券のA銘柄100株:証券番号〇〇を長男に遺贈する」と明確に明記するのは有効です。しかし、「証券を長男に遺贈する」という曖昧な表現だと、どの証券を指すのか不明確になり、遺言が無効となる可能性があります。証券の種類や銘柄、数量を具体的に記載することが必要です。 - 証券の評価額に基づいた分配を考慮する
証券の価値は変動するため、遺言作成時と相続時で大きな差が生じることがあります。たとえば、遺言書に「A株100株を長男に、B株50株を次男に」という形で分けた場合、相続時点での株価変動によって、結果的に長男と次男が受け取る資産の価値に大きな不均衡が生じることがあります。このようなトラブルを避けるために、証券の価値を考慮し、現金など他の資産と合わせたバランスの取れた分配を行うことが推奨されます。 - 遺言執行者の指定
証券の相続には、証券会社との手続きや名義変更が必要です。こうした手続きをスムーズに進めるためには、遺言執行者を明確に指定しておくことが重要です。行政書士が遺言執行者として指定されることも多く、法的に正確な手続きを代行する役割を果たします。
3. 行政書士が果たすサポート役 – 遺言書作成での具体的な事例
行政書士は、遺言書の作成において、正確さや法的効力を確保するためのサポートを提供します。以下に、行政書士が関わった具体的な事例を紹介します。
事例 1: 複数の証券を保有していたAさんの場合
Aさんは国内外で複数の証券を保有しており、それぞれの証券が異なる証券会社で管理されていました。彼は遺言書を作成する際、「全ての証券を長男に遺贈する」という形で遺言を記載していましたが、これではどの証券会社にどの証券があるのかが不明確でした。行政書士が関与し、証券ごとの銘柄、数量、証券会社の詳細を遺言書に記載することで、遺言の法的効力を高め、相続人がスムーズに手続きを進められるようサポートしました。
事例 2: 証券の評価額に問題があったBさんのケース
Bさんは、遺言書に「特定の証券を娘に、現金を息子に遺贈する」と記載していました。しかし、遺言作成時の証券の価値と、相続時の価値が大幅に変わり、娘が受け取る資産が非常に大きくなってしまうことが発覚しました。このケースでは、行政書士が遺言書の作成段階で証券の価値変動リスクについて助言し、証券の遺贈とともに他の資産を調整するよう提案していれば、トラブルを未然に防げたでしょう。
4. 遺言書に証券を含める場合のトラブル回避策
証券を遺言に含める際に考慮すべきトラブル回避策をいくつか紹介します。
- 定期的な見直し
証券の価値は時々刻々と変わるため、遺言書を一度作成しただけで安心せず、定期的に見直すことが大切です。特に、株価の大幅な変動や証券の売却・購入があった場合には、遺言書の内容が現状に即しているか確認する必要があります。 - 証券の種類を理解して書く
株式、投資信託、債券など、証券には様々な種類があります。それぞれの証券には相続手続きが異なるため、どの証券が遺言に含まれているのかを明確にしておくことが重要です。 - 専門家への相談
証券を含む遺言書の作成は複雑なため、行政書士などの専門家に相談し、法的に有効で適切な遺言書を作成することが推奨されます。専門家のアドバイスを受けることで、書き方による法的リスクを最小限に抑えることができます。
まとめ: 証券を遺言に含める際は正確さがカギ
証券を遺言に含める際には、具体的な銘柄や数量、証券会社の情報を正確に記載することが不可欠です。曖昧な表現や不完全な情報では、遺言が無効となったり、相続人間でトラブルが発生するリスクが高まります。行政書士は、こうしたリスクを防ぐために、遺言書の作成をサポートし、法的に有効な形で相続が進められるようにします。
証券相続をスムーズに進めるために、専門家のサポートを受けながら、定期的な遺言書の見直しや適切な書き方を心がけましょう。