成年後見制度は、高齢者や障害者など判断能力が不十分な方の権利を守るための制度です。家族の誰かがこの制度を利用し、後見人として支援を行う場合、具体的な手続きや費用、そして注意点を知っておくことが大切です。今回は、成年後見制度を利用する際の流れ、必要書類、費用について詳しく解説し、家族で成年後見人を選ぶ際のポイントもご紹介します。

成年後見制度の利用手続き

成年後見制度を利用するには、家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。手続きの主な流れは以下の通りです。

  1. 家庭裁判所への申立書提出 まず、後見が必要な方の居住地を管轄する家庭裁判所に、成年後見の申し立てを行います。
  2. 必要書類の提出 申し立て時には、以下の書類が必要です:
    • 申立書
    • 後見人候補者の申立書
    • 申立人(家族など)の関係を示す戸籍謄本
    • 財産目録
    • 被後見人の診断書(判断能力の不十分さを証明するもの)
  3. 調査・審査 裁判所は提出書類に基づき、後見が必要かどうか、誰が適切な後見人かを調査します。場合によっては、家庭裁判所が後見人として第三者(弁護士、司法書士など)を選任することもあります。
  4. 成年後見人の選任 裁判所が成年後見人を選任し、選任通知が届きます。ここから後見人としての活動が始まります。

必要書類

成年後見制度の申し立てには、様々な書類が必要です。代表的なものは以下の通りです。

  • 申立書類: 家庭裁判所から取得することができる申立書を作成します。
  • 財産目録: 被後見人の財産の一覧を作成します。預貯金、不動産、保険などを記載。
  • 診断書: 被後見人の判断能力が不十分であることを証明する診断書が必要です。これは医師に作成を依頼します。
  • 親族関係を証明する書類: 戸籍謄本や住民票など、申立人と被後見人との関係を示す書類です。

成年後見制度の費用

成年後見制度を利用する際に発生する費用は以下の通りです。

  • 申立手数料: 申し立て時に家庭裁判所へ支払う手数料で、1件あたり800円程度。
  • 登記手数料: 成年後見の登記をする際に発生する手数料で、2,600円程度です。
  • 医師の診断書作成費用: 診断書の費用は医師によって異なりますが、1~2万円程度が一般的です。
  • 弁護士や司法書士の報酬: 申立手続きを専門家に依頼する場合は、報酬が必要です。相場としては10万円~20万円程度です。
  • 後見人への報酬: 家庭裁判所が後見人に対して報酬を支払う場合、財産の規模によって異なりますが、月額2万円~6万円程度が相場です。

家族で成年後見人を選ぶ際のポイント

成年後見人には、被後見人の財産管理や身上監護(生活全般の支援)を行う責任があります。そのため、後見人を選ぶ際には以下の点に注意しましょう。

  • 信頼できる人物かどうか: 後見人には、被後見人の財産管理や生活支援を任されるため、家族の中でも特に信頼されている人物が適任です。
  • 適切な判断力があるか: 後見人は被後見人の利益を最優先に考え、判断しなければなりません。そのため、冷静に状況を見極め、適切な判断ができる人物が望ましいです。
  • 時間的な余裕があるか: 後見人は財産管理や日常生活のサポート、施設との契約など多くの業務を担当するため、時間的な余裕がある人物が適しています。
  • 専門家の協力も検討する: 家族内で後見人を選ぶのが難しい場合、弁護士や行政書士、司法書士などの専門家を後見人に依頼することも可能です。専門家は法律に基づいた適切な対応ができるため、安心して任せることができます。

まとめ

成年後見制度の利用には、家庭裁判所への申し立てや必要書類の準備、費用がかかります。後見人を選ぶ際には、信頼性、判断力、時間的余裕が重要なポイントです。また、手続きが複雑な場合や家族内での選任が難しい場合には、専門家の協力を得ることも検討しましょう。

成年後見制度を正しく利用することで、大切な家族の生活や財産をしっかりと守ることができるので、事前にしっかり準備しておくことが大切です。