法定後見制度は、高齢者や判断能力が不十分な方々を保護するための重要な制度です。法定後見人には、本人の利益を守るために様々な業務が求められます。本記事では、法定後見人が行う具体的な業務内容について、詳細に解説します。特に、居住用不動産の売却に際して必要な裁判所の許可手続きについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。

1. 施設の契約業務

法定後見人の業務の一つに、本人が安全で快適な生活環境を保つための施設の契約があります。具体的な業務内容は以下の通りです:

  • 介護施設や老人ホームの選定: 本人の健康状態、経済的状況、家族の意向を考慮し、最適な施設を選びます。例えば、医療設備が充実した施設が必要な場合や、家族との距離が近い施設を優先する場合など、個別のニーズに応じて選定します。
  • 契約手続きの代行: 施設の契約書の確認、入居手続き、利用規約の確認など、すべての契約手続きを後見人が代行します。契約内容が本人の利益に合致しているかを確認することが重要です。
  • 費用の支払い管理: 施設の利用料や追加サービス費用の支払いも後見人が管理します。支払い遅延が発生しないように、定期的に支出を確認し、必要に応じて予算を調整します。

2. 財産管理と記帳業務

法定後見人は、本人の財産を守り、適切に管理する責任を負います。そのため、日常的な財産管理とともに、厳密な記帳を行う必要があります。

尚、コスモス成年後見サポートセンター会員は、3か月に1度、報告義務もございますので、後見される方も安心です。

  • 口座の管理: 本人の銀行口座を管理し、入出金の状況を定期的に確認します。不審な取引がないか監視し、口座残高を常に把握します。
  • 収支の記録と管理: 本人の収入(年金、給与など)と支出(生活費、医療費、施設費用など)を詳細に記録し、予算内での生活が維持されるよう管理します。
  • 財産目録の作成と更新: 本人が所有する不動産、金融資産、動産(宝石、骨董品など)のリストを作成し、定期的に更新します。このリストは、後見人の任務終了時や遺産分配時に重要な役割を果たします。

3. 居住用不動産の売却に伴う裁判所の許可取得

法定後見人が居住用不動産を売却する際には、裁判所の許可が必要です。これは、本人の財産を守るための重要な手続きです。以下にその具体的な流れを解説します。

  • 売却の必要性の説明: 裁判所に対して、売却が本人の利益になることを証明する必要があります。たとえば、施設入居の資金を確保するため、または財産の維持費がかさむために売却が必要である場合などが挙げられます。
  • 申請手続きの実行: 裁判所への正式な申請が必要です。申請書には、不動産の評価証明書、売却契約書の写し、売却理由の詳細などを添付し、売却が本人の利益に合致していることを説明します。
  • 裁判所の審査と許可取得: 裁判所が申請内容を審査し、売却が本人の利益に適うと判断した場合のみ許可が下ります。この許可がなければ、売却手続きを進めることはできません。

4. 死後事務の手配

本人が亡くなった場合、法定後見人には死後事務を行う役割が課せられます。これには、以下のような業務が含まれます:

  • 遺産整理: 本人の財産を正確に把握し、相続人への分配を行います。遺言書がある場合は、その内容に従って遺産の分配を進めます。
  • 死亡届の提出: 本人が亡くなった際には、市区町村役場に死亡届を提出し、その他の必要な手続きを行います。
  • 葬儀の手配: 本人の遺志や家族の希望に基づき、葬儀を手配します。葬儀業者との契約、支払い手続きなど、実務的なサポートを行います。

5. その他の業務内容

法定後見人の業務はさらに広がります。以下のような業務も重要です:

  • 医療契約の締結: 本人の治療に必要な医療契約を締結し、入院や手術などに関する決定をサポートします。
  • 日常生活の支援: 本人の生活を支えるためのサービス手配、日常生活用品の購入などを行い、生活の質を維持するよう努めます。
  • 権利擁護活動: 本人の権利を守るため、必要に応じて法的措置を講じることも含まれます。例えば、不当な契約を無効にするための行動などです。

まとめ

法定後見人の業務は多岐にわたり、非常に重要な役割を果たします。施設の契約や財産管理、裁判所の許可を必要とする不動産の売却、さらには死後の手続きまで、幅広い業務を通じて本人の利益を守ります。このような制度を正しく理解し、必要な場合には適切な後見人を選ぶことが大切です。