終活は、人生の終わりを迎えるにあたり、家族に迷惑をかけずに自分の意思をしっかりと伝えるための重要なプロセスです。しかし、終活の方法にはさまざまなアプローチがあり、故人と相続人の間で意識のズレが生じることがあります。今回は、故人が「遺言書の作成」を終活の中心と考えていた場合と、相続人が「物の整理・不用品の処分」を期待していた場合のギャップについて、そのギャップが相続財産の確定にどのように影響するかを専門的に解説します。
故人が考える終活は、主に遺言書作成
遺言書は、相続において故人の意思を明確にする重要な文書です。故人が遺言書を作成することで、相続人間でのトラブルを未然に防ぎ、スムーズな相続手続きが期待されます。遺言書により、誰が何を相続するのかが明確になるため、遺産分配の段階での混乱を避けることができます。
相続人が求める終活は、物の整理と不用品の処分
一方で、相続人が故人に終活を期待することは、故人が物の整理や不用品の処分を通じて、故人が残したものを整理整頓し、相続財産の全体像を把握をわかりやすくすることです。物の整理が進むことで、遺産に含まれる財産や負債が明確になり、相続手続きがスムーズに進むようになります。これは、物理的な整理が財産評価や相続税申告の準備においても重要な役割を果たすからです。
ギャップがもたらす相続財産の確定の難しさ
終活において「遺言書の作成」を故人が重視する一方で、物の整理が十分に行われていない場合、相続人にとって相続財産の確定が難しくなることがあります。例えば、遺言書には記載されていない動産や、未処理の負債が遺品整理の過程で発見されることがあります。こうした事態は、相続税申告や遺産分割協議を進める上で予想外の手間や時間がかかる原因となり得ます。(実際、私はこういう経験がたくさんございます。依頼した時点で把握していた口座で相続財産目録を作っていましたが、後日、証券口座が見つかったなど)
また、物の整理が進んでいないと、相続財産の評価が正確に行えず、結果として相続税の過不足が生じるリスクが高まります。特に、遺言書だけに依存して相続を進める場合、相続財産全体の把握が不完全であることが多く、これが相続手続きを複雑化させる一因となります。
行政書士としてのサポートの重要性
行政書士として、終活の段階からクライアントに対して、遺言書の作成だけでなく物の整理の重要性を伝えることが求められます。物の整理を通じて、相続財産の全体像が明確になること、そしてそれが相続手続きをスムーズに進めるための基盤となることを説明し、サポートすることが必要です。
また、相続人に対しても、故人の意思を尊重しつつ、物の整理が相続手続きの円滑化にどれほど重要かを理解してもらうことが大切です。これにより、相続財産の確定がスムーズに進み、相続税の適正な申告が可能となります。
結論
終活における「遺言書作成」と「物の整理・不用品の処分」のギャップは、直接的に相続トラブルを引き起こすわけではありませんが、相続財産の確定を難しくし、相続手続きを複雑化させる可能性があります。行政書士としては、このギャップを理解し、クライアントと相続人の双方に対して包括的なサポートを提供することで、相続が円滑に進むよう努めることが重要です