本日は、皆様の生前対策として重要な選択肢である「任意後見」と「家族信託」について、簡単にご説明いたします。選ぶときは慎重に、専門家の意見を聞き、最終的にご自分で決めてください。

任意後見とは?

任意後見とは、将来の判断能力が低下した場合に備えて、信頼できる人(任意後見人)に財産管理や生活支援の権限を事前に委任する契約です。この契約は公証役場で公正証書として作成し、家庭裁判所が後見監督人を選任することで効力が発生します。

任意後見のポイント

  • 契約の効力発生: 本人の判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所が後見監督人を選任することで、契約が正式に発動されます。
  • 後見監督人の役割: 任意後見人の業務を監督し、本人の権利を保護します。
  • 任意後見人の役割: 本人の財産を適切に管理し、日常生活のサポートや医療・介護の手配を行います。

移行型任意後見とは?

移行型任意後見は、現時点である程度判断能力が低下している場合に適用される形式です。次のステップで支援を段階的に強化します。

  1. 見守り契約: 判断能力が一部残っている状態で、定期的な見守りやサポートを行う契約を結びます。
  2. 任意代理契約: 軽度の判断能力の低下に対応するため、信頼できる人に財産管理や生活支援を委任します。
  3. 任意後見契約への移行: 判断能力がさらに低下した際に、家庭裁判所に後見監督人の選任を申請し、任意後見契約に移行します。

家族信託とは?

家族信託は、信頼できる家族(受託者)に自分の財産を託し、その管理や運用を委ねる制度です。この信託契約が成立すると、すぐに効力が発生します。家族信託は相続対策や財産管理の手段として広く利用されています。

家族信託のポイント

  • 柔軟な財産管理: 信託契約で、財産の管理方法や受益者への利益配分を柔軟に設定できます。
  • 受託者の役割: 信託財産を管理し、受益者に利益を分配します。
  • 利用目的: 相続対策や高齢者の生活支援、障がい者の将来のための資金管理など、さまざまな目的で活用されます。

任意後見と家族信託の比較

任意後見家族信託
効力発生のタイミング家庭裁判所が後見監督人を選任することで効力が発生。信託契約が成立すると即効力が発生。
管理者任意後見人が家庭裁判所の監督のもとで財産管理と生活支援を行う。受託者が信託契約に基づいて財産を管理し、受益者に利益を分配。
柔軟性身上監護を含む広範なサポートが可能で、特に高齢者の生活支援に適している。財産管理や相続対策の柔軟性が高く、家族の状況に応じたカスタマイズが可能。
費用と手続き契約時の公証費用と、後見監督人の監督費用が発生。家庭裁判所の関与が必要。信託契約の作成費用と、受託者への報酬が発生。家庭裁判所の関与は不要。
長期的な管理判断能力が低下した後のサポートに特化している。長期的な財産管理や相続対策に適している。

どちらを選ぶべきか?

任意後見と家族信託は、それぞれ異なるニーズや状況に応じた選択が必要です。任意後見は、判断能力が低下した後の生活支援や医療・介護手配に強みがあり、特に高齢者の生活支援に向いています。一方、家族信託は、財産管理や相続対策の柔軟な設定が可能で、受託者と受益者の関係を明確にしたい場合や、長期的な財産管理が必要な場合に最適です。

最後に

将来の安心を確保するためには、任意後見と家族信託のそれぞれの特徴を理解し、ご自身やご家族にとって最適な方法を選択することが大切です。不明点やご相談がございましたら、どうぞお気軽に立神法務事務所までご連絡ください。

(2024年7月25日作成 / 2024年9月1日更新)