遺言について考える方は、「自分の時間が残り少ないのでは…」と思った時に初めてその必要性を感じることが多いかもしれません。しかし、実際には遺言書をきちんと用意している方は意外に少ないんです。

なぜでしょうか?それにはいくつかの理由があります。お金の問題や遺言書を作成するための要件が難しいと感じる方が多いからです。

遺言書には、大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。今回は、あまり一般的ではなく、実務でもあまり見かけない「秘密証書遺言」は除いてお話します。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

まず、自筆証書遺言についてです。これは、遺言者が自分で書く遺言書のことを指しますが、書き方には厳格なルールがあります。例えば、普通のノートに簡単に書いてしまったり、A4用紙1枚にさっと書いて封もせずに置いている方もいます。しかし、遺言者としては「自分の思い通りにしてほしい」と願っていても、要件に従って書かれていない遺言書は無効になってしまうことがあります。

例えば、相続人の間で揉めている時に、このような自筆証書遺言が見つかると、「この遺言書は無効だ」と主張する人が必ず出てきます。実際、私も何度もこのような場面に立ち会ってきました。そして、裁判になっても、要件を満たしていない遺言書は無効とされてしまいます。

そこで、公正証書遺言の登場です。

公正証書遺言は、公証役場で公証人の前で作成する遺言書です。遺言者が遺言書の原案を作成し、公証人が遺言者の面前でその内容を読み上げます。遺言者が内容に間違いがないことを確認した上で、署名と押印を行います。この場には証人2人が同席し、同様に署名と押印を行います。

ただし、公正証書遺言には証人2人を用意する必要があり、これが難しい場合には公証役場の職員に依頼することもできますが、追加の費用が発生します。また、遺言書の作成費用もかかります。

尚、登記の観点から申しますと、比較的、そういう自筆証書遺言でも検認手続きをちゃんと経れば、登記は通す傾向にあるみたいです。(司法書士談)

費用について

「じゃあ、どれくらい費用がかかるの?」という疑問があるかと思いますが、相続財産の価格や遺言書のページ数によって異なります。私の経験では、証人が2人揃えられる一般の家庭であれば、だいたい5万円前後で収まることが多い印象です。

私個人としても、公正証書遺言をお勧めしています。なぜなら、遺言書の要件が確実に満たされ、遺言書は公証役場で保管されるため、検認手続きも不要だからです。

自筆証書遺言の新しい制度

また、自筆証書遺言にも新たな制度があります。法務局での保管制度です。この制度では検認手続きが不要になるというメリットがありますが、遺言書の内容までは確認されないという点がネックです。

もし遺言書についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ当事務所にご相談ください。

(2024年5月7日作成 / 2024年8月30日更新)