高齢の親が住んでいる実家、将来空き家になるのでは?売却や管理をスムーズにしたいけれど、いざという時には「名義が親のままで動かせない」…というのはよくある話です。
家族信託は、自宅を“凍結”させずに柔軟に管理できる仕組みですが、使い方を間違えると大きなトラブルの原因にもなります。

✅ そもそも「家族信託で自宅を信託する」とは?

家族信託では、自宅(不動産)を親(委託者)から子(受託者)に“名義上は移さずに”、管理・処分の権限を与えることができます。
例えば以下のようなことが可能です:

  • 親が認知症になっても、自宅を売却できるようにする
  • 子が親の代わりに修繕や賃貸の管理をする
  • 相続後の自宅の使い道を決めておける(例:長男に住ませるなど)

📌 ポイント
信託後も所有権は信託名義になるだけで、親が引き続き住み続けられるのが特徴です。

✅ メリット① 認知症になっても自宅を柔軟に管理できる

自宅の売却・賃貸・修繕などを受託者が実行できるようになるため、いざという時の動きが早いです。
成年後見制度と違い、柔軟に意思を反映しやすいのが魅力です。

✅ メリット② 相続時の争い防止・スムーズな引継ぎ

  • 「長男が住み続ける」「売却して分配する」といった遺言に近い意思表示ができる
  • 不動産の名義変更に時間がかからず、相続人間での話し合いがスムーズになる

✅ メリット③ 贈与にならない(原則)

信託では名義を「信託登記」にするだけで、贈与税が原則発生しません。
不動産を子に「贈与」せずとも、管理を任せられる点も魅力です。

❗ 落とし穴① 信託登記・信託口口座など実務が複雑

信託で自宅を扱う場合、「信託登記」が必要です。
これには以下の書類や手続きが必要となります:

  • 公正証書での契約書作成
  • 登記簿への信託登記
  • 管理費などの支払い口座(信託口口座)の開設

📌 専門家のサポートなしでは難しい場面も多いです。

❗ 落とし穴② 受託者が管理責任を負う

  • 修繕や賃貸管理、税金の支払いなど、受託者には法的責任が発生
  • 管理がうまくいかないと、兄弟間のトラブルになることも

💡 例:
「長男が受託者として管理していたが、売却のタイミングをめぐって兄弟と揉めた」など

❗ 落とし穴③ 住宅ローンがあると要注意

住宅ローンの残っている自宅は、信託できない場合や、金融機関との調整が必要になります。
信託することで契約違反となるリスクもあるため、ローン付き不動産の信託は要注意です。

✅ 実務ポイントまとめ

項目チェック内容
信託契約書の作成方法公正証書にするのが原則
登記の手続き司法書士に依頼するのが一般的
税金への影響不動産取得税・登録免許税の扱いに注意
信託後の管理方法受託者が責任を持って定期管理が必要
家族内での理解共有トラブル防止のために説明・同意が重要

📚 まとめ:自宅信託は“武器”にも“リスク”にもなる

自宅を家族信託することで、将来の不安を大きく減らせる可能性があります。
一方で、不動産特有の手続きの複雑さや、受託者の責任の重さなど、慎重に進める必要もあります。

制度を正しく理解した上で、早めに準備しておくことが、家族全体の安心につながります。