相続手続きを進める際、相続人の一人が行方不明であると、その対応には特別な手続きが必要です。行方不明者がいると遺産分割協議が進められないため、まずはその所在を確認し、それでも不明な場合には法的な手続きに進む必要があります。ここでは、具体的な対応方法について解説します。
1. 現地調査
まず、行方不明者が最後に住んでいた住所に赴き、現地で調査を行います。具体的には次の手順を取ります:
- 隣人への聞き取り: 隣人に話を聞き、行方不明者の最近の様子や、転居の可能性について情報を集めます。隣人からの情報は、行方不明者の現在の居場所を特定するための手がかりになることがあります。
- メーターの確認: 行方不明者の自宅にあるガスメーターや電気メーターなどを確認し、最近の使用状況をチェックします。メーターが動いている場合、少なくとも誰かがその家に住んでいる可能性があります。
2. 市役所での確認
現地調査で行方不明者の所在が確認できない場合、市役所での確認を行います。
- 委任状の取得: 他の相続人から委任状をもらい、市役所で行方不明者の税の納税状況を確認します。納税状況から、行方不明者がまだその住所に住んでいるのか、あるいは他の場所に転居したのかを判断するための手がかりが得られることがあります。
- 住民票の確認: 市役所で住民票を確認することも有効です。ただし、個人情報の開示には制限があり、開示の可否は自治体によって異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
3. 家庭裁判所への申し立て
これらの調査でも行方不明者の所在が確認できない場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる必要があります。
- 不在者財産管理人の選任: 不在者財産管理人は、行方不明者の財産を管理し、相続手続きに参加します。家庭裁判所が選任するこの管理人が、行方不明者に代わって遺産分割協議を行います。
4. 失踪宣告の申し立て
行方不明者が長期間にわたり行方不明であり、生死が不明な場合には、「失踪宣告」を申し立てることができます。
- 失踪宣告とは: 行方不明者が7年以上にわたり生死不明の場合、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てができます。失踪宣告が認められると、法律上その行方不明者は死亡とみなされ、その時点で相続が開始されたものと扱われます。
- 失踪宣告後の手続き: 失踪宣告が下されると、行方不明者は法律上死亡したこととなり、通常の相続手続きが進められます。ただし、行方不明者が後に生存して発見された場合、相続手続きのやり直しが必要になる可能性があります。
まとめ
相続人の中に行方不明者がいる場合、まずは現地での調査や市役所での確認を行い、所在確認を試みることが重要です。それでも解決しない場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任や「失踪宣告」の申し立てを行うなど、法的手続きを進める必要があります。このような場合は、専門家に相談しながら適切な対応を取ることが、スムーズな相続手続きにつながります。