昔の相続は今とこんなに違う!武士や商人の財産の分け方
「相続」と聞くと、現在の法律に基づく遺産分割を思い浮かべるかもしれません。しかし、日本の歴史をさかのぼると、武士・商人・農民 などの身分によって、財産の継承方法が大きく異なっていました。
現代と比べて何がどう違うのか?歴史的な相続の仕組みを分かりやすく解説します。
1. 江戸時代・戦国時代の相続と現代の違いとは?
現在の相続制度は「民法」によって決められていますが、江戸時代や戦国時代には、法律ではなく慣習や家の掟が重要視されていました。
時代 | 相続のルール | 誰が財産を継ぐ? |
---|---|---|
戦国時代(1467〜1590年頃) | 武家社会では「家督相続」が基本 | 長男が家督を継ぎ、弟は別の家に仕官する |
江戸時代(1603〜1868年) | 武士・商人・農民で相続方法が異なる | 武士は長男が跡を継ぎ、商人は有能な者が相続 |
現代(1947年〜) | 民法で相続ルールが定められる | 配偶者や子どもに法定相続分が決められる |
このように、時代ごとに相続の考え方は大きく異なっていました。
2. 武士の相続:家を守るための「家督相続」
戦国時代から江戸時代にかけて、武士の家では家督相続(かとくそうぞく)が基本でした。
家督相続とは?
- 家の存続を最優先とし、原則として長男が全財産を相続
- 次男・三男は家を継げないため、他の武家に仕官するか、僧侶・医者になる
- 長男が相続しない場合は、養子をとってでも家を存続させる
この仕組みは、家を守るためには合理的でしたが、次男以下は財産をもらえないため、厳しい人生を強いられることもありました。
🔹 例:徳川家の相続
徳川将軍家でも長男が家督を継ぎ、弟たちは「御三家」(尾張・紀伊・水戸)など別の藩を受け継ぐ形で相続していました。
3. 商人の相続:能力主義の「家業相続」
商人の家では、武士とは異なり有能な者が家業を継ぐケースが多く見られました。
商人の相続の特徴
- 長男以外でも、経営手腕がある子どもが家を継ぐことがあった
- 実子よりも優秀な番頭(従業員)を養子にして家業を任せることも
- 相続争いを避けるために「分家制度」を活用し、次男・三男にも支店を持たせることがあった
🔹 例:三井家の相続
江戸時代の大商人「三井家」では、分家制度を活用し、一族全体で商売を広げる戦略をとっていました。
💡 現代の「事業承継」に近い考え方が、すでに江戸時代から存在していたのです。
4. 農民の相続:土地を守るための「分割相続」
農民にとっての財産は田畑(農地)でした。そのため、家族全員が生きていけるよう、相続の方法も独自のものになっていました。
農民の相続の特徴
- 武士や商人と異なり、兄弟で田畑を分割して相続することが多かった
- ただし、農地を細かく分けすぎると農業が成り立たないため、長男が多めに相続するケースも
- 次男以下は、分けてもらった土地を元手に新しい村を作ることも
💡 現代の「不動産相続」にも通じる考え方が、この時代から根付いていました。
5. 現代の相続と何が違う?歴史から学ぶ教訓
歴史を振り返ると、相続の形は時代によって大きく異なりますが、**「家を守る」「家業を継ぐ」「財産を分ける」**という基本的な考え方は、今も昔も変わりません。
現代と過去の相続の違い
項目 | 過去(江戸・戦国時代) | 現代(民法による相続) |
---|---|---|
相続の基本方針 | 家や家業を守るための相続 | 個人の財産を公平に分ける |
誰が相続するか | 長男や有能な者が相続 | 配偶者・子どもが法定相続分をもとに相続 |
トラブルの防ぎ方 | 家の掟や慣習を守る | 遺言書や法律を活用する |
🔹 昔は「家の存続」が最優先だったが、現代は「公平性」が重要視されている
🔹 長男がすべてを継ぐ時代から、法的に相続分が決まる時代へ変化
6. まとめ:歴史を知ると、現代の相続がよく分かる!
✅ 武士は「家督相続」、商人は「家業相続」、農民は「分割相続」と、それぞれ相続の形が異なっていた
✅ 現代の相続は、歴史的な流れを受けて「公平性」を重視する制度へ変化
✅ 「家を守る」「財産を公平に分ける」など、昔と変わらない部分もある
相続の形は時代とともに変化してきましたが、家族や財産を守るという本質は今も変わりません。
「うちはどう相続するべきか?」と考える際には、歴史を参考にするのも一つの方法です。