特定行政書士の立神です。今回は後見業務の基礎を書いていきたいと思います。

後見業務は、高齢者や障害者など判断能力が不十分な方々を法的に支援し、財産管理や日常生活のサポートを行う制度です。日本の民法では、成年後見制度が整備されており、これにより支援が必要な人々が適切に保護され、自立した生活を送ることができます。このブログでは、後見業務の基本的な概要について説明します。

1. 成年後見制度の種類

成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の二種類があります。

法定後見は、本人の判断能力が既に低下している場合に家庭裁判所が後見人を選任する制度です。法定後見はさらに三つのタイプに分かれます:

  • 後見:判断能力が著しく不十分な場合に適用され、後見人が全ての法律行為を代理します。
  • 保佐:判断能力が不十分な場合に適用され、特定の重要な法律行為に関して保佐人の同意が必要となります。
  • 補助:判断能力が一部不十分な場合に適用され、本人が希望する特定の法律行為に関して補助人の同意を得ます。

任意後見は、将来判断能力が低下する可能性に備えて、本人が信頼できる後見人をあらかじめ選任しておく制度です。任意後見契約を公正証書で作成し、判断能力が低下した際に家庭裁判所の審判を経て任意後見が開始されます。

2. 後見人の役割と義務

後見人の主な役割は、本人の財産管理と身上監護です。具体的には以下のような業務を行います:

  • 財産管理:本人の預貯金や不動産の管理、収支の把握、遺産分割協議への参加など。
  • 身上監護:本人の生活環境の整備、医療や福祉サービスの利用手続き、日常生活の支援など。

後見人は本人の利益を最優先に考え、公正かつ誠実に業務を遂行する義務があります。また、定期的に家庭裁判所に対して業務報告を行い、監督を受ける必要があります。

3. 後見制度の利用手続き

法定後見制度を利用するには、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てる必要があります。申立人は本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などです。審判が行われると、家庭裁判所が後見人を選任し、後見業務が開始されます。

任意後見の場合は、公正証書による任意後見契約を締結し、将来的に判断能力が低下した際に任意後見の開始を家庭裁判所に申し立てます。

4. 後見業務のメリットと課題

後見業務のメリットは、判断能力が低下した本人が適切に保護され、財産の不正使用や生活の困難から守られる点にあります。また、信頼できる後見人によるサポートで、本人の生活の質が向上することも期待されます。

一方で、後見業務にはいくつかの課題もあります。例えば、後見人の選任に時間がかかることや、後見人の適正な選定が難しい場合があることです。また、後見人に対する報酬や手続きの煩雑さが、利用者にとって負担となることもあります。

まとめ

成年後見制度は、判断能力が低下した方々の権利を守り、生活の安定を図るための重要な制度です。後見人は財産管理と身上監護を通じて、本人の生活を支援します。制度の利用には手続きや報告義務が伴いますが、適切に活用することで大きなメリットが得られます。後見業務を理解し、必要な時に適切に利用することが、本人や家族の安心につながります。